らしさ

先日、伊那食品工業(株)塚越寛氏の講演会が富山で開催され聴講してきました。とても印象的だったのは、社員はすべて家族・ファミリーという発想をもって経営をしているとのこと。社員それぞれの能力というものは千差万別。差があるからといって切り捨てていくのではなく、その人自身の今できるベストを毎日心掛けて、それそれが最善を尽くすということが全社員に浸透しているのだそうだ。もちろん個々で努力も必要だが、互いがフォローし合い補い合うことで部署や会社としても円滑でプラスのベクトルが働くのだろう。確かに自分の家族は切り捨てたりしないですもんね。塚越氏曰く、社員が安心して働ける場を提供していくことが、社員のモチベーションを高く保つ要素にもなるといったような話もされていた。その1つにもなるかもしれませんが、個人消費を活発にするために、よく可処分所得をあげるといいという話を耳にしますが、伊那食品工業では「実質所得」というのを意識されているそうです。1例をあげると、基本的に会社で所有しているものは、社員は自由に使ってもいいというのだそうだ。たとえば、車の整備やDIYなどで工具を使用したいときは、必要に応じて会社のものを借りれるということ。そうすれば、自分自身で工具を購入する必要がないから、家庭での無駄な出費はおさえられるということになる。その分を家族サービスなどに回すことで、家庭内も円滑になるということか?いずれにせよ、家族・ファミリーという発想で社員を信頼しているからこそできることでもある。また、伊那食品工業の社員の皆さんは、とても心配りがあり礼儀が正しいらしく、塚越氏が地元のいろいろなお店や場面で、社員のいい評判をきくそうである。もちろん社員の皆さんは、どこにお勤めなのかをお店で伝えているのではなく、その振る舞いや行動からお店の方が、なんとなくわかってしまうそうなのだ。伊那食品工業「らしさ」がにじみ出ているのでしょうね。そうなことを思うと、弊社でお付き合いさせていただいている企業でも、その企業「らしさ」が明確でぶれない企業は、この不況で多少の影響はあるにしても、それなりに元気で活発な雰囲気を感じさせる。「らしさ」をつくり出していくには、まずは「そもそも企業として個人としてどうあるべきか」というビジョンをしっかり考えることが必要だと、講演を聴いて改めて感じさせられた。48期連続増収増益を達成した経営者の言葉には、やはり自信と説得力を感じる。まずは素直に受け入れて自分たちなりの「らしさ」を見つけ出していきたいと思う。

「らしさ」=「頑固」でないことだけは確かである。柔軟に発想し、広い視野を持って新しいことに取り組んでいこう!

専務取締役 大島秀紀